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2020年6月に読んだ本

6月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:6008
ナイス数:2257

【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』優秀賞受賞作】 縁見屋の娘 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』優秀賞受賞作】 縁見屋の娘 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
「幽玄の絵師」が面白かったので手に取った、三好昌子さんのデビュー作にして、このミス大賞・優秀賞受賞作品。解説によると、大賞ではなく、優秀賞になったのは、ミステリのジャンルに当てはまらなかったからとか。確かにミステリというより、時代物伝奇小説といった感じだが、これがとても面白い。舞台は江戸時代の京都。口入屋の「縁見屋」は、代々、女子ばかりで26歳で亡くなる呪われた家系と言われている。縁見屋の娘、お輪のもとに現れた不思議な力を持つ行者、帰燕は、何を知っているのか。史実である天明の大火と結びつく物語は夢幻の趣。
読了日:06月30日 著者:三好 昌子
騒がしい楽園騒がしい楽園感想
舞台は世田谷の住宅街にある幼稚園。埼玉の系列幼稚園から転勤してきた舞子は、着任早々、近隣住民からの騒音苦情、園児の親同士の確執、待機児童の親からの強烈なアプローチ、加えて、事なかれ主義の園長といった問題に直面する。そして、何者かによる、幼稚園への嫌がらせとしか思えないイタズラが、段々エスカレートして行き・・・。最初、今までの中山さんの小説とは一風異なる、幼稚園教諭の苦労を描いたお仕事小説なのかと思って読んでいたが、やはり中山さんのこと、話はそこに留まらず、大変な方向へ。謎解きミステリとして、十分楽しめた。
読了日:06月28日 著者:中山 七里
あなたの不幸は蜜の味 イヤミス傑作選 (PHP文芸文庫)あなたの不幸は蜜の味 イヤミス傑作選 (PHP文芸文庫)感想
イヤミスを集めたアンソロジー、女性作家6人による6編の短編。中でも、1番気になったのは、沼田まほかるの小説。もう何年も新作が出ていなかったが、とうとう新作が? と思ったら、短編集「痺れる」に収められている短編だった。他の作品は、5人中、4人が直木賞作家という豪華なアンソロジー(辻村深月、小池真理子、乃南アサ、宮部みゆき、新津きよみ)だが、いくつか既読作品もあり、イヤミスというか、そもそもこれはミステリなのか?という作品もあるが、改めて読んでも、巧みなストーリーテラーの女性作家たちの小説は、やっぱり上手い。
読了日:06月27日 著者:宮部 みゆき,辻村 深月,小池 真理子,沼田 まほかる,乃南 アサ,新津 きよみ
決断の刻決断の刻感想
一戸建ての建築現場で発見された他殺死体。そして、殺された男の勤務先、日兼コンサルタントの女性社員、続いて、所轄の品川中央署のニ課の刑事が行方不明に。これらは、果たして何か関連性があるのか。品川中央署・捜査一課長の原は、今では、日兼コンサルタントの社長で、かつて大学ラグビーの名フォワードだった今川と、20年前のある事件以来、ラグビーを通じた友人だったが・・・。紳士のスポーツ、ラグビーの真髄である、自らの誇りと相手に対する敬意、正義感は、実社会に生きているのか。ラストに分かるタイトルの意味が、ずっしりと重い。
読了日:06月27日 著者:堂場 瞬一
むかしむかしあるところに、死体がありました。むかしむかしあるところに、死体がありました。感想
一寸法師、花咲爺さん、鶴の恩返し、浦島太郎、桃太郎 × アリバイ、ダイイングメッセージ、叙述トリック、密室、連続殺人(人?)。日本の昔話を元にした自由な創作にして、全てに殺しが出てくるミステリ。元の昔話の主人公が、必ずしも善人ではなかったりする意外なブラックさ、竜宮城の見取り図、鬼ヶ島の地図が出てくる、本格推理小説風のもっともらしさに、思わずニヤリとさせられる。桃太郎が、とう見ても虐殺者、鬼が被害者の「絶海の鬼ヶ島」は、子供には読ませられない(?) この、昔話×本格ミステリは、第2、第3弾も作れるのでは?
読了日:06月24日 著者:青柳 碧人
彼女たちの犯罪彼女たちの犯罪感想
「彼女たち」と言うからには、1人ではない。それでは、それは2人なのか、3人なのか、はたまたそれ以上なのか。しばらく読み進めても、それがなかなか見えてこない。「彼女たち」が誰なのか、それがこのミステリのキモ。巻頭でニュースとして提示されるある女性の不審死。本編を読み始めると、それが、裕福な医者一家に嫁いだ女性だと分かる。ここで一体何が、と思いながら読んでいると、話は思わぬ方向へ。「彼女たち」とは、そういうことだったのか。その意外性は面白いが、若干無理を感じる部分があるのと最後があっけない感じなのが少々残念。
読了日:06月23日 著者:横関 大
手紙 (文春文庫)手紙 (文春文庫)感想
両親は亡く、兄と二人暮らしだった高校3年の時、兄が強盗殺人事件を起こして逮捕された。それ以来、直貴の人生には、強盗殺人犯の弟というレッテルが付きまとい、毎月、刑務所から送られてくる兄からの手紙がまた、直貴を苦しめる。そして、ひた隠しにしていた秘密が漏れるとき、夢、仕事、恋愛、多くのものが直貴の手からこぼれ落ちていく。何故、罪を犯したのは自分ではなく兄なのに、その兄のせいで差別をされなければならないのか。犯罪者の家族は、普通に生活を送れないのか。犯罪者の家族は、加害者なのか、被害者なのか。最後は涙なくして。
読了日:06月21日 著者:東野 圭吾
たそがれダンサーズ (単行本)たそがれダンサーズ (単行本)感想
たそがれダンサーズとは、おじさんたちのダンスチーム。理由は様々に、社交ダンスを習い始めた40代から60代を中心としたおじさんたちが取り組んだのは、男女ペアのダンスではなく、男性ばかり16人のチームによる「フォーメーション」のダンス。ダンスから遠ざかろうとしていたダンス教室の先生を巻き込み、これまでの人生、家族との関係、仕事のこと、それぞれ、いろいろな事情を抱えながら、素人ながらに、競技会に向けて必死にダンスの練習をするおじさんたち。「一人じゃ絶対に手に入らないものを、皆で取りに行く」という思いが心を打つ。
読了日:06月20日 著者:桂 望実
富士には月見草―太宰治100の名言・名場面 (新潮文庫)富士には月見草―太宰治100の名言・名場面 (新潮文庫)感想
桜桃忌に。太宰治の名言集、というより、もっと長い小説の引用と、太宰と同郷の青森県出身の筆者による解説と言うか、太宰治論から成る本。月見草と聞くと、ついつい「富士には、月見草がよく似合う」と口をつきそうになる程、「富嶽百景」の中のこの一文は、有名だが、本来、日中に月見草が咲いているはずがないという指摘に、あっと驚いた。自然体のような文の中に、こんな太宰マジックがあったとは。また、「かれは、人を喜ばせるのが、何よりも好きであった!」という文が、頭に残りつつ、どの小説の文か忘れていたが、「正義と微笑」だったか。
読了日:06月19日 著者:太宰 治,長部 日出雄
幼な子の聖戦幼な子の聖戦感想
表題作他1編。芥川賞候補になった表題作が、いきなり大量殺人の場面から始まってびっくり。青森県の村で村会議員をしているものの、全くどうしようもない主人公と村長選挙の騒動。このノリは決して嫌いではないけれど、これが芥川賞候補かというと、ちょっと疑問。文学というよりドタバタ喜劇? 主人公に全く共感できない表題作より、もう1編の「天空の絵描きたち」の方が、面白く感じられた。ビル窓の清掃会社に務める主人公の話と言えば、つい先日、古市憲寿「百の夜は跳ねて」で読んだばかり。時間が経ったら、2作がごちゃごちゃになりそう。
読了日:06月17日 著者:木村 友祐
天使も怪物も眠る夜 (単行本)天使も怪物も眠る夜 (単行本)感想
著者初読み。原始時代から未来の世界まで、2つの一族の対立という共通の主題でつなぐ競作企画「螺旋プロジェクト」、その最終話とも言うべき、21世紀末の東京が舞台となったSF。最初、登場人物が多すぎ、なかなか読み進め難かったが、登場人物たちが徐々に繋がっていくにつれ、不思議な世界観に彩られた未来の物語が、段々面白味を増し、最後は頁を繰る手が止まらなくなる。まだシリーズはこれで4作めで、半分しか読んでいないが、本作は、2つの一族の対立の物語の、まさに最終話らしい終わり方。他の4作も読んで、また本作を読み直したい。
読了日:06月15日 著者:吉田 篤弘
帝都地下迷宮帝都地下迷宮感想
都市伝説などではなく、東京の地下に実際にある廃駅。鉄オタ、取り分け、廃駅オタの区役所職員の小日向が、趣味が高じて、こっそり侵入した旧万世橋駅で出会った人々。彼らは何故、地下の廃駅に住んでいるのか。そして事態は、ミステリ、社会派サスペンスの方向へ。旧万世橋駅、旧博物館動物園駅は聞いたことがあったが、旧新橋駅、旧神宮前駅のことは知らなかった。特に銀座線から見えるという旧神宮前駅は、銀座線をよく使っているのに、そして今日も銀座線で旧神宮前を通過していたはずなのに、全く気付かなかった。今度、気を付けて見てみたい。
読了日:06月13日 著者:中山 七里
あの日にドライブ (光文社文庫)あの日にドライブ (光文社文庫)感想
牧村伸郎、43歳。有名私大を卒業し、大手都市銀行に就職したものの、リストラに逢い、今はタクシー運転手。元都市銀行マンのプライドを捨てられず、鬱々とした毎日、家族にまで感じてしまう不満。もう一度、人生をやり直すことができたら、もし、昔の恋人と別れず結婚していたら、人生は変わっていたのではと、妄想ばかりが膨らんでいく。もう一度、人生をやり直せたらという気持ちは、中高年なら、多かれ少なかれ、誰もが抱いたことがある気持ちだろう。だけど、人生をやり直せないなら、後ろより前を向いた方がいい。ラストに少し救われる思い。
読了日:06月12日 著者:荻原 浩
楡の墓楡の墓感想
「鳳凰の船」が、明治時代の函館を描いた短編集だったのに対し、本作は、明治時代の札幌とその周辺を描いた短編集。今の創成川の基となる用水を引いた大友亀太郎、札幌の本府建設に着手した島義勇、開拓長官を務めた黒田清隆、開拓大判官として黒田清隆から北海道開拓の施政を任された松本十郎、札幌農学校で若者を指導したクラーク博士、その他、大きな希望を持って内地から移り住み、札幌を、北海道を切り拓いた無名の人々。江戸時代から拓けていた函館と違い、明治になってから、何もなかったところに計画的に作られた札幌の成り立ちが興味深い。
読了日:06月10日 著者:浮穴 みみ
百の夜は跳ねて百の夜は跳ねて感想
職場で仕事をしていると、窓拭きのゴンドラが窓の外に見えることがある。でも、まるで見えていないかのように、皆、仕事を続けている。そのゴンドラ側から見る世界。就活に失敗して、窓ガラスの清掃会社に就職した主人公は、窓の向こうの老婆と出会ったことで、どう変わっていくのか。ビル窓の内と外、幸福と不幸、生と死、それら2極に、白夜と極夜の白黒が重なるイメージの表出は秀逸だが、前作「平成くん、さようなら」に比べると、意外な程、オーソドックスな小説。ところで、世界種子貯蔵庫なんて、てっきり創作だと思ったら、本当にあるのか。
読了日:06月08日 著者:古市 憲寿
シューマンの指 (講談社文庫)シューマンの指 (講談社文庫)感想
指先を失ったはずのかつての友人が、海外でピアノを弾いているという情報が、「私」のもとに届いた。果たして、指が再生し、ピアノを弾けるまでになるということは、あり得るのだろうか? 物語は、高校の時のその友人、永嶺修人との話へ。早熟の名ピアニストの名声を欲しいままにしていた修人と音大を目指していた私。修人が語るシューマンとその曲に関する論説は、これがミステリ小説ということを忘れる程、詳細を極めている。そして、ミステリらしく、ある事件が起こったのは、小説ももう後半に入ってから。最後に分かる真相に、全く驚かされた。
読了日:06月07日 著者:奥泉 光
トップリーグ(2)アフターアワーズ (ハルキ文庫)トップリーグ(2)アフターアワーズ (ハルキ文庫)感想
総理大臣や内閣の要職から、特別扱いされている記者たち、「トップリーグ」。前作でトップリーグ記者になっていた松岡は、大和新聞社で史上最年少の特別編集委員となり、一方で、松岡のかつての同僚で、前作の出来事の後、マスコミを辞めていた酒井は、京都で学習塾を経営していたが・・・。女性記者、大畑康恵と灰原美樹、2人が関わり、取材で明らかになっていく政権の暗部の秘密は、まるでミステリ小説の謎解きを読んでいるかのよう。そして、プロローグに出てきた「私」と若い新聞記者が、それぞれ誰だったのか、最後に見える事実に驚かされる。
読了日:06月06日 著者:相場 英雄
【第161回 芥川賞受賞作】むらさきのスカートの女【第161回 芥川賞受賞作】むらさきのスカートの女感想
著者初読み。なので、著者の他の作品との比較はできないが、この小説だけを読む限り、文章は平易で、特に上手いとは思えず、内容も大したことが書かれている訳でなく、これが芥川賞?と思ってしまう。同じく芥川賞受賞作の藤野可織「爪と目」が、「わたし」には知り得ないはずの「あなた」のことが書かれた、不思議な視点の小説だったが、本作で「わたし」が語る「むらさきのスカートの女」の話は、本当にすべて見たことなのか。その意味で、この小説も不思議な視点を持っている。異常なのは、「むらさきのスカートの女」なのか、「わたし」なのか。
読了日:06月04日 著者:今村夏子
インタビューズインタビューズ感想
平成元年から、平成年間、毎年、大晦日に渋谷のスクランブル交差点でインタビューをした、その記録、という設定の小説。世相、流行、政治、スポーツ、重大事件、世界情勢・・・、あの頃、こんなことがあったというより、こんな風潮だったという時代の雰囲気が伝わってくる。昭和とは異なり、平成年間、社会の変化はそれ程大きくなかったと思っていたが、パソコンがようやく普及し始めた時代から、ネット、携帯、そしてスマホの時代へ、技術だけ見ても、社会がいかに大きく変化したかに改めて驚かされる。新聞記者から作家へ、堂場さんの姿もリアル。
読了日:06月03日 著者:堂場 瞬一
平場の月平場の月感想
50歳、35年振りに会った中学の同級生。いろいろあって、それぞれ今は、地元で一人暮らし。ここで始まるのは、果たして恋なのか・・・。若者の難病物の恋愛小説はよくあるが、中高年の決して珍しくはない闘病と男女の関係が、こんなにもピュアな物語になるとは。友人たちが順当に歳を取り、家庭を成熟させている一方で、どこでどう違ってしまったのか、寂しい生活を送っている2人。「夢みたいなことをね。ちょっと」という言葉に切なさが溢れる。未来を夢見てはいけないのか。「それ言っちゃあかんやつ」という言葉に、胸が締めつけられる思い。
読了日:06月01日 著者:朝倉かすみ

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  1. 2020/07/01(水) 00:09:47|
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